アペックス・シール

 
 
3ピース・アペックス・シールについて
 2004年、藤田エンジニアリングの社長から、「たんじさん、3ピースアペックスシール作れない?」と言われて、簡単な気持ちで作り始めて数ヶ月、1台分完成!。(簡単なんて言いましたが、取り合えずマツダ純正3ピースを充実に再現するのが早道と考え、試行錯誤した訳ですがね(笑))
テスト開始、搭載車は当時ホットバージョンや、ビデオ・オプションなどでお馴染みの藤田のデモカーでした。サイドポート仕様、レブリミット9000rpm、最大ブースト1.3の車でした。馬力は500ps以上。
当然走る時は峠MAXやサーキット全開走行です。約1年後テスト合格との事で、お客さんの車にも組み込みを始めました。
この1号機ですが、2008年7月現在(まる3年)で、まだ壊れてないですよ(^_^)v 他のショップさんは信じてないようですが、本当に壊れてないですよ。

上の写真が私が作った3ピースのアペックスシールです。
下の写真は3ピースを始めて組み込んだ藤田のデモカーです。
FEED スキル・アペックスシール

アペックスシールは何故3ピースがいいのか?

2003年RX−8発売と同時期にマツダ純正補修用アペックスシール(ターボ用)が3ピースから2ピースに変わった。
ところが、全国有名チューナーが口を揃えて「2ピースは耐久性に劣る、400psが限度」と聞くようになった。あるショップでは、オーバーホールしたエンジンから外したアペックスシールを入念に検査し使えるものは使う、今までに無い徹底したリサイクルで、事を凌いで来たそうです。
2005年各ショップ単位で在庫していた3ピースアペックスシールも底を着き、国内外で作られているセラミックやカーボン製のアペックスシールもコストの面や耐久性の面でことごとくテストに失敗していると聞いている。
そこで、何故2ピースは耐久性に劣るのか?藤田エンジニアリングの社長は考えた、「何故マツダは3ピースを開発したのか?」である。
1985年に発売を開始したFC3S(サバンナRX−7)、この車種より自主規制185馬力の時代が始ったわけですが、この頃から本格的なターボチャージドのエンジンが各メーカーから発売されて来たのです。
余談ですが、トヨタ・スープラ、日産・スカイラインなど、続々と自主規制ネット185馬力エンジン搭載者が発売されてきました。扁平率60%タイヤ標準のRX−7が始めてだったかな?
ちょっと脱線してしまいましたが、どうしてマツダは3ピースにしたのかです。今考えて見れば、高出力に伴う「熱」の問題が一番大きい問題ではなかったかと思われます。
基本的に1973年にルーチェに初めて搭載された13Bが基本ですので、それから補器類は変わっても排気量は全然変わってない訳で、単に吸気・燃焼・排気効率を高めただけで、この出力ですからねぇ〜。
 こんな事例がありました、FD3Sサイドポート加工、出力約500馬力以上のエンジンをオーバーホール、アペックスシールの他仕様は前仕様と同じです。当然3ピースは無いので、マツダ純正2ピースアペックスシールを組んだ訳ですが・・・
慣らし終了後いつものようにセッティングをして燃調を合わせ、鈴鹿サーキットに行った訳です。全開で2週3週目の直線でブローしてしまったそうです。もちろんこのセッティングは3ピース装着と同等のセッティングでですよ。
それでは本題です。
どうして2Pは耐久性に劣るの??
放熱性と気密性
この2つが重要なのではないかと考えました。

@放熱性&反り
 2ピースになったため、部品単体の質量が増し面積に比例して熱がこもり易くなり、その分熱による歪も大きくなると思われる。
その歪により、図1のように先端の一番弱い所のカケや、排気ポートに引っ掛かり抉られる事になりブローします。大体が図に示した部分が欠けるようです。ま!この症状は限界を超えれた3ピースにも多々ある事ですが・・・
A気密性
 図2を見て頂くと解ってもらえると思いますが、シールの溝にシールを入れた時のクリアランス限度は0.2ミリと整備書には書いてあります。0.2ミリですよ!コンマ2!。って事は、図のように混合気が隣の部屋に流れて行きますよね?(微量ではありますが?)
 そこでです、図3を見て下さい。この図が3ピースの作用する予想図です、どうです?これならクリアランスに関係無く気密性が保たれますよね。
 青い矢印がシールスプリングです、スプリングの力で押された2つのシールが行き場を失い、上手い具合にテーパーにカットされた斜面をスライドし、側壁に密着するわけですね。これでガスは漏れない訳ですね。
 次に、良く聞くシール溝の開きですが、これも図4を見て頂けると解るように、右の3ピースに比べ左の2ピースの方が開くのが早い。圧縮・爆発の繰り返しでシールが左右に振られ、段々と口が開いてきます。この開きがシールの上下運動の妨げになり、圧縮が抜けてしまう現象が起き、動きを制限されて来るシールはその後欠けや圧縮漏れの原因になってしまいます。


 以上のように、何処を取っても2ピースより3ピースの方が偉いって事が解ったと思いますが、上記に上げた現象、症状は、2ピースも3ピースも同じように起こりますが、ブローまでの耐久性は3ピースの方が上って事です。400psに満たない仕様に組み込んでも、それなりに2ピースより無理が効くって事ですね。

 最後になりますが、ここに書いた事は自分の経験といろいろな方から聞いた事による想像でしかありません。たまたまその理屈が嵌って今に至ってるのかも知れません。
ですが、2011年3月現在で約90台のハイパワーRE車に組み込まれ、1台のトラブル報告もありませんのでその現実だけはお伝えしておきます。
尚、アペックスシールの単品販売は今現在行っておりません。藤田エンジニアリングでの組み込みのみとなっておりますのでご了承下さい(^_^;)

RX−8のペリ排気エンジン
 2010年3月16日追記
 現在、藤田エンジニアリングではRX-8のペリ排気エンジンのオーナーが増えています。 エンジンの仕様は基本的にRX‐8のエンジンですが、ローターハウジング・アペックスシールにFD用を使用し、コーナーシールはRX−8用を3ピースシールが入るように加工して組み付けます。 
 試作時点で試乗させてもらいましたが、かなりのレスポンスで気持ちの良いエンジンになってますよ。 で、そのコーナーシールの加工も私が担当しております。 最近では5台分のコーナーシールを製作し納めしました。 RX−8のオーナーさん興味がありましたら藤田エンジニアリングまで問い合わせてくださいね。

2011年3月11日以降、アペックスシール生産用加工機が東北地方太平洋沖地震被災により、藤田エンジニアリングへのアペックスシール供給は停止しております。